表題番号:1996A-534 日付:2002/02/25
研究課題子どもの顔におけるかわいらしさの発達的変化に関する実験研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 助教授 根ケ山 光一
研究成果概要
 本研究は、コンピュータによる画像処理を用いて、さまざまな月齢の乳幼児の正面向き無表情の顔写真から、0~2、3~5、6~8、9~11、12~14、15~17、25~27か月齢のそれぞれの「平均顔」を作り、それを高齢者男女29人(平均59.9歳)、平均3.8(SD=1.1)か月齢の乳児を育児中の父母93人(平均30.1歳)、大学生男女102人(平均20.5歳)、計224人に提示して、それぞれの顔の月齢・かわいらしさの相対評価・かわいらしさの絶対評価などを行ってもらった。
 まず月齢の相対評価の全体的傾向からは、父母と学生が正確に月齢変化を読みとっているのに対し、高齢者の評価にはとくに最年少の顔に対する過大評価が見受けられた。かわいらしさの相対評価からは、全体を通じて、最年少の顔がもっともかわいくなく、その後かわいらしさが増して、最後に再びかわいらしさが減じるという変化が指摘された。詳細にみると、育児中の父母にはほぼその子どもの月齢に相当する3~5か月齢の顔についてかわいいという評価が高まる傾向があった。
 次にかわいらしさの絶対評価(5段階)をもとに、各顔について世代(3水準)と性(2水準)による2要因分散分析を行ったところ、特に生後半年までの2つの顔について性の主効果が有意で、母親の方が父親よりもかわいらしさを強く感じていた。世代の主効果は3~5か月齢の顔で父母>大学生、25~27か月齢の顔で高齢者>父母・大学生という有意差としてみられた。交互作用はいすれも有意でなかった。
 育児中の父母を比較したところ、最年長の2つの顔を除くすべての顔でかわいらしさの強さには母親>父親という差が有意もしくはほぼ有意であったのに対し、大学生では最年少の2つの顔に女子学生>男子学生という有意な差がみられるのみであった。最後に、育児中の父親による親行動の頻度とかわいらしさの絶対評価との相関をとってみると、おむつ換え(尿)や遊びとの正の対応関係が比較的強くみられた。このように、顔のかわいらしさはそれを見る側の性や年齢によって異なることが明らかにされた。