表題番号:1996A-529
日付:2002/02/25
研究課題経済活動と環境負荷の相互依存関係に関する実証研究―中国に関する事例研究―
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 社会科学部 | 助教授 | 池田 明由 |
- 研究成果概要
- 公表されたデータにもとづいて、中国の環境問題を経済活動との関連でみると、中国はエネルギー構造や産業構造、個別の環境保全技術技術といったさまざまな局面で問題を抱えていることが分かった。とりわけ、沿岸地域に比べると経済のダイナミズムが少ない一方、重化学工業比率の高い東北地域の省で、そのような問題が深刻であった。
今後中国の環境対策を模索するにあたって、日本産業界の持つ過去の公害の克服という経験は非常に役に立つと思われる。しかし日本の経験がそのまま、中国の問題に当てはまるとは限らない。日本では有効だった方策が、中国でも有効とは限らないのであり、真に中国にふさわしい方法が吟味されていく必要がある。
そのような問題意識から本研究では、中国遼寧省(旧満州地区)を例にとり、まず公表データによって経済と環境の状況を分析した。その結果、同省は著しく重化学工業偏重の経済であること、とくに中小規模の燃焼装置において環境対策(本研究ではSOx対策に限定)が遅れていることがわかった。
その一方、中国のSOx対策としてはどのような方法が現実的でふさわしいかを工学的文献に基づいて検討した。その結果、中国においては日本と同様の方法ではなく、効果は劣るものの、より廉価な方法(流動層ボイラの採用と燃料のブリケット化)が有効であることが示唆された。またもしこれらの方法が遼寧省の工業で採用されたとするとどれだけSOx排出が削減できるかを試算したところ、92.3%が削減できるという結果を得た。この試算値には、家計や非工業による排出は考慮されていないので、それを考慮すれば効果はもう少し小さなものとなるかもしれないが、この計算結果は中国において適切な環境対策を実行していくことの重要性を示唆している。