表題番号:1996A-528 日付:2002/02/25
研究課題国際社会における新しい社会単位の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 多賀 秀敏
研究成果概要
 20世紀後半から、21世紀初頭にかけて、約4世紀間続いた主権国家のみを国際社会の単位とする体系が崩壊しつつある。本研究は、この体系転換に関して、構成単位、単位間関係、体系境界の3分野にわたる研究の出発点として構成単位の研究に最大の焦点を当てた。
 主権国家にかわって新しく登場しつつある社会単位は、国際機構、多国籍企業、NGO、地方自治体、さらに、こうした新しい国際社会単位の連携・連合からなる組織である。本年度は、このうち、NGO、地方自治体、及び、地方自治体の国際連携に主たる焦点をあてて、その形成過程、役割、特質及び相互間関係について明らかにした。とりわけ、東南アジア諸国で活動する日本及び現地のNGOについて成果があった。同時に、本研究の最大の目標である「新しい国際体系」に関する理論構築を手がけた。本研究の特色は単なる文献研究にとどまらず、NGOや地方自治体に対する現地調査や聞き取り調査に基づく点である。その点でも成果があったが、当初目標としたデータの解析を行い、他の研究者も共用しうる二次データを作成しインターネット上での公開を行う段階まではいたらなかった。ケースとして、地方自治体については、東北地域の国際化戦略を取り上げ、成果は、筑摩書房から出版予定である。国際社会において国内の地方が社会単位として活動しうることを論じた。NGOについては、新潟市を中心とするNVC(新潟国際ボランティアセンター)の「ベトナム未来プロジェクト」をとりあげ、その報告は『ベトナム未来プロジェクト』に発表した。まったく一介の市民が地方と地方が国境を越えて結びつく可能性が証明された。同時に理論構築では次のような手がかりをえた。体系変化は、単位:多様化とアイデンティティの「複層化」、関係:ゼロサムからノンゼロサムへ、新たな社会運営の担い手の登場、境界:可能領域の拡大と限界、価値の発信に整理できた。