表題番号:1996A-525 日付:2002/02/25
研究課題polymer brushを有する機能界面を利用した生体高分子の三次元集積化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 専任講師 常田 聡
研究成果概要
 まず、多孔性膜の界面から polymer brushがはえている構造を作成するために、中空糸状の多孔性膜(ポリエチレン製)に電子線を照射した後、エポキシ基をもつモノマ-(グリシジルメタクリレート)を前駆体としてグラフト重合させた。その後、エポキシ基の一部をイオン交換基(ジエチルアミノ基)に、残りをアルコール性水酸基(エタノールアミノ基)へ変換した.この多孔性膜の膜間に圧力をかけて溶液を透過させ、牛血清アルブミン(BSA)を対流に乗せて polymer brushまで運び、きわめて短時間で生体高分子集合体を創製できることを確認した。
 この膜に一定流量でBSA溶液を透過させたときの圧力損失は、BSAの吸着が進むにつれて増大する。楕円球のBSA分子がpolymer brushに最密充填的に吸着し、液の透過できる細孔径を減少させると仮定すると、BSA吸着後の膜の透過圧力はHagen-Poiseuille式によって推算できる。この理論式より推算された透過圧力と圧力センサーにより実測した透過圧力を比較した結果、両者はよく一致し、吸着容量から推測した多層吸着構造モデルの妥当性が、流体力学的側面からも裏付けられた。また、polymer brush中のイオン交換基密度の増加とともに、タンパク質吸着量が増大することも同時に示された。
 次に、蛍光プローブ法によって、polymer brushのキャラクタリゼーションを行った。グラフト重合量や溶媒環境を変えて、蛍光スペクトルのピーク波長シフトを測定することによって、polymer brushのコンフォメーションを反映する蛍光プローブのまわりの極性の情報が得られた。この結果から、水中では、イオン交換基密度の増加とともに、polymer brushが電荷同士の反発によって表面法線方向に伸長し、結果的にタンパク質をより多く抱き込む形態を作ることが確認できた。