表題番号:1996A-523 日付:2002/02/25
研究課題自己組織化と外部知性との結合に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 松山 泰男
研究成果概要
 この研究でいう自己組織化とは、情報処理機構の内部状態が、与えられた入力に応じて固有の形態に変化していくことを指している。自己組織化は、個々の素子は比較的単純ではあるが、全体としての数が極めて多いとき、有効となる情報処理手法である。この研究では、自己組織化を利用しようという立場に立っている。従って、われわれユーザーは、自己組織化系に、「このような形態での自己組織化を行ってほしい」との要求を与える必要がある。これは教師信号とみなせるのであるが、この研究では、単に学習系の出力を矯正する教師信号ではなくて、複雑な自己組織化の過程やその結果に変形を指示できるようにして、自己組織化と外部知性との対話を可能にしている。研究内容は、アルゴリズム自体の開発とそれを用いた事例の作成に分けられる。
 【アルゴリズムの開発】教師なし学習としては、競合学習を採用した。ただし、単純な競合学習による自己組織化は、すでに多くの研究者により報告されている。また、このような自己組織化は、非常に限られた情報処理能力しか持ち合わせていない。そこでこの研究では、二種類の互いに異質な自己組織化(グループ化特徴マップと重みベクトル特徴マップ)を同時に生成できるような一般化された競合学習アルゴリズムを開発した。
 【事例の作成】二種類の特徴マップのうち、グループ化特徴マップは外部知性との対話性に優れている。この研究のもう一つの目的は、マルチメディア情報処理の新たな手法を提供することにもあるので、静止画像と動画像を情報処理の対象とした。このとき、グループ化特徴マップは画像のパターンと対応し、それをユーザーが変形することにより、一枚の圧縮された静止画像から動画像を生成して、超高能率圧縮を可能にした。さらに、この事例は、人間の表情を生成したことにもなっている。
 以上のようにこの研究は、自己組織化、外部知性との対話、マルチメディア情報処理、感性情報処理にまたがる多くの成果を得た。