表題番号:1996A-521 日付:2002/02/25
研究課題半導体ヘテロ接合およびショットキー接合における接合近傍の結晶欠陥評価とその制御技術の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 堀越 佳治
研究成果概要
 半導体のp-n接合、ヘテロ接合、ショットキー接合などにおける結晶欠陥の研究はデバイスの特性向上のうえで重要である。このような欠陥に対する評価手段として、これまで主にDLTS法が用いられてきた。この方法はエネルギー的に深いトラップを評価する方法で、接合から比較的遠い部分のトラップの評価には適しているものの、接合近傍のトラップの検出は不可能であった。接合近傍の欠陥の評価法として、我々は順バイアス電流印加時の雑音が接合のトラップの存在に敏感であることを発見し、これを有効な欠陥評価手段として完成させるため、この研究計画を実行することとなった。界面にトラップがあると、そのトラップに高速で充放電が生じるため、バリヤ高さが高速で変調をうける。これによって特定の周波数の雑音が増加するため、トラップの評価が可能になる。
 今回は金属/GaAsショットキー界面について調べたが、GaAsのMBEによる成長後、連続して金属(A1)をMBE法で推積することにより、成長後に金属を蒸着する従来の方法に比べてトラップ密度が著しく低減することが明らかになった。これら二種類のショットキーダイオードについて10kHz~200MHzまでの周波数範囲で雑音測定をおこなったところ、10kHz~1MHzの比較的低周波領域で通常の方法で製作したダイオードでは雑音温度が高く、かつサンプル温度を低減させると、それがさらに上昇することが確認された。これに対し、金属をGaAs成長と連続して成長させたダイオードでは雑音温度は上記は周波数範囲で著しく小さく、かつサンプル温度によって変化しないことが確認された。これによって後者のダイオードでは接合付近のトラップ密度が無視できるほど小さいことが明らかになった。今後この方法によるトラップの深さや密度の定量的な決定法を検討していく予定である。