表題番号:1996A-518 日付:2002/02/25
研究課題電子・電気機器用線材および自動専用シャフト部品の高真直化に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 浅川 基男
研究成果概要
 棒鋼・綿材の引抜きプロセスにおいて、ダイス形状、減面率、引抜き速度、摩擦係数等の加工条件は最終製品の品質特性に大きな影響を与える。特に残留応力は、引抜き後の切削・研磨等の機械加工あるいは熱処理により寸法、形状、特に真直度に大きな変化を与えることがある。また通常の引抜きでは表層に引張りの残留応力が発生しやすく、疲労強度低下の要因ともなる。したがって引抜き加工では残留応力を極力少なくすることが非常に重要である。そこで著者らは、引抜き加工時の残留応力を実験により測定するとともに、汎用弾塑性有限要素法(ABAQUS)により比較評価した。
 直径18mm、S45Cの焼入、焼戻し材を引抜いて残留応力を検討した結果、下記の知見が得られた。
 1)弾塑性有限要素法(ABAQUS)により実験との比較評価を行った結果、本解析が実プロセスの現象をよく再現し、残留応力の解析に有効な手段であることが判明した。
 2)ダイス全角度2αを8゜~20゜に変化させ、減面率r=13.8%の一定値で引抜いた結果、2α=15゚付近で軸方向表面の残留応力のピークが出現する。すなわち工業上最も活用されているダイス角度は、残留応力の観点からは必ずしも適切な選択ではなく、残留応力軽減を第一目的とするならば、ダイス角を小さくすることが必要である。
 3)ダイス角度2α=14゚の一定値とし減面率r=5~25%に変化させ引抜いた結果、r=10~15%前後で引張残留応力のピークが出現する。この付近の減面率は工業上よく使用される領域ではあるが、これを避けて、さらに増大あるいは減少させることにより引張残留応力は軽減する。以上の現象は接触長さ比L/dで整理できる。
 以上の結果から、引抜き後切削加工時のシャフト部品の曲がり防止のため、ダイス角度を小さく改善した結果、曲がりが大幅に軽減し、不良品発生の防止、工程の合理化に貢献しえた。