表題番号:1996A-509 日付:2002/02/25
研究課題有期労働契約および派遣労働契約法等非典型的労働契約法制に関する日仏比較研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 助教授 島田 陽一
研究成果概要
 研究者は、近年における雇用形態の多様化のなかで、有期労働契約および派遣労働契約のようないわゆる非典型労働契約の役割が大きくなってくるのに対して、現行法制は、十分な対応力を備えたものではないとの認識のもとに、非典型労働契約法制の発達したフランス法を比較の対象として選択し、現行法制の改革およびそれに至るまでの現行法制の現実妥当的な解釈を検討してきた。
 この課題は、政府の規制緩和推進政策の展開のもとで、有期労働契約の上限規制の緩和および派遣労働の対象業務の大幅拡大ないしはネガティブリスト化というが議論が昨年において急浮上してくるなかで、その重要性および緊急性がより明らかになっていった。
 研究者は、このような状況の下で、差し当たりフランスの現行法制がどのように運用されているかを知るために、近年の判例を中心に検討を重ねた。その成果の一部が、12月に『労働法律旬報』に公表した「教員の有期労働契約の有効要件」である。今後も徐々にこの領域での研究成果を公表していく予定である。
 また研究者は、日本での労働契約期間の上限規制緩和の動きがすすむなかで、その法政策的な当否を緊急に検討する必要をより強く感じ、わが国の民法626条および労基法14条の制定の経緯を踏まえ、日本における労働契約の期間に関する法的検討を加えることをもう一つの当面の課題とした。
 この結果、この問題はこれまで必ずしも十分な検討が行われておらず、そのことが最近の立法論をめぐる議論の水準を規定していることが明らかになってきた。この検討成果が、「労働契約期間の上限規制の緩和」『季刊労働法』183号(1997年9月)である。