表題番号:1996A-508 日付:2002/02/25
研究課題「ポスト冷戦」期における軍事力の役割・機能に関する比較憲法的・憲法政策論的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 水島 朝穂
研究成果概要
 「ポスト冷戦」期において、それぞれの国民国家は、その軍事力の存立根拠を新たに提示する必要性に迫られている。地域紛争の激化のなかで国連PKOも大きく変容し、また、「人道的介入」という名による個別的または集団的干渉・介入もさまざまな形で展開している。また、大規模災害対処など、軍事力の非軍事的機能も注目されている。本研究は、日本とドイツにその素材を求め、1990年代における軍事力の対外的・対内的機能変遷を分析したものである。
 本年は、まず、「人道的介入」と呼ばれる現象にスポットをあて、具体的展開過程とその問題性を検証した。日本国憲法の観点からそれがどのように評価されるかも明らかにした。次いで、命令・服従関係の一元化を特徴とする軍隊のなかで、市民社会的原理であるところの「参加」原理がどのように応用されているかを、ドイツ連邦軍の「代表委員」制度を素材にして分析した。さらに、国連PKOの変容のなかで、日本自衛隊がどのような形でその「海外派遣」を行ってきたかを分析するとともに、それが日本の対外政策にもらたす影響を探った。さらに、国民国家の「国益」実現の手段だった軍事力が、「国際的公共の福祉」実現のための「公共財」として、新たな正当化根拠を模索していることを分析し、その実態と現実的機能を検証した。これらの検討を通じて、日本国憲法の平和主義の新たな意義づけを試みた。成果の一部は、以下のものに反映している。
 論文「『ポスト冷戦』と平和主義の課題」『法律時報』1997年 5月号、単著『武力なき平和----日本国憲法の構想力』岩波書店(1997年)、論文「ドイツにおける軍人の『参加権』----『代表委員』制度を中心に」石村善治教授古稀記念論文集『法と情報』信山社(1997年)、論文「『人道的介入』の展開とその憲法的問題性」浦田賢治教授還暦記念論文集『立憲主義と民主主義』三省堂(1998年刊予)など。