表題番号:1996A-503 日付:2002/02/25
研究課題日本のカルテルの経済分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 堀内 俊洋
研究成果概要
 日本で今、経済システムの改革が重要な政策課題になってきている。本研究はその日本的システムの歴史的な側面をカルテルの面から考察するものである。今年の研究の対象は、日本的システムの中でもとりわけ中小企業活動に密接に関連するカルテルについてである。このテーマは、私がこれまで関心を持ってきた問題であり、日本経済の行方ともつながるテーマである。例えば大企業取引、地域での産業調整、企業城下町、などいくつかの重要な今 度の課題に密接に関連し、そのためこれからも継続させたいテーマである。
 中小企業は、日本の高度成長時代以前から1970年前半までほぼ一貫して近代化の対象であり、また弱者経済の対象でもあった。政策枠組の中心にあったものが、いわゆる団体法に基づく中小企業カルテルであり、今年度の研究対象であった。
 本年の研究成果は、第1に、まだ未定稿であるが、「中小企業カルテルの経済分析」がある。内容は、(1)中小企業共同化政策の戦後の歴史、(2)その政策の経済理論的含意、(3)団体法に基づく共同行為の実態、(4)最も典型と見られる繊維産業での実態、をとりまとめたものである。あくまでも歴史分析であり、今日の経済システムの改革、特に日本的経営システムの改革まで視野にいれたものではない。この点は今後の課題である。
 第2は、既に入手したデータの解析である。まだ、進行中であるが、内容は、イタリアにおけるこのような共同行為の実態についての研究である。関連研究として既に出版したものもあるが、日本的な経営と共同行為に対するイタリア中小企業の評価を分析中である。研究費のほとんどは、コンピューター関連の支出に充てた。研究成果への直接的な寄与はまだ少ないが、今後の研究効率を改善させるものとなることを期待している。