表題番号:1996A-502 日付:2003/11/06
研究課題ホッブズにおける機械論的自然像と近代政治哲学の成立
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 佐藤 正志
研究成果概要
 本研究は、政治思想の近代性をその最古層において捉えるという視点から、ホッブズの政治哲学を同時代の科学革命と近代的学問理念の形成過程の文脈の中で捉えようとするものであり、アリストテレス―スコラ的伝統から近代科学への知の総体的転換の中で、政治哲学はどのように構造的に転換して、近代的な政治哲学として成立したのかを明らかにしようとするものである。
 こうした視座については『政治思想のパラダイム-政治概念の持続と変容』(1996年)において明らかにした。そこではとくに、政治思想の近代におけるパラダイム転換を、ホッブズの政治哲学のうちにとらえ、このホッブズの政治哲学の「近代性」について分析する論文を付論として掲載した。
 こうした枠組みを確立する中で、今後さらに、ホッブズの政治哲学自体を、機械論的自然像にもとづく近代的国家論の形成という視座から解明してゆくための手がかりが得られた。そこでは、特に次の3点、すなわち、第一に、ホッブズのレトリック論の分析を通した近代的知の意味の解明、第二に、デカルトやボイルとの論争の分析を通じた、ホッブズの機械論的自然像の特質の解明、第三に、近代的国家概念の形成との関わりにおける、ホッブズにおける政治哲学の構造転換の解明を目指したいと考えている。