表題番号:1996A-325 日付:2002/02/25
研究課題左右脚の蹴りと振り出しを強化する筋力トレーニング
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 鈴木 秀次
研究成果概要
 本研究は、被験者が筋力トレーニング機器を使って短距離走の模擬動作を行った時の動作のメカニズムについて考察した。被験者は左下肢を充分に伸展させたまま右下肢を屈曲-伸展させる動作を行った。動作は、右下肢の股関節屈曲伸展動作に対する負荷強度(L:40-45回の反復が可能な重量、H:10-15回の反復が可能な重量)、動作速度(F:1 Hz, S:0.17 Hz)、および左下肢の接地位置(中央、20cm 前方、20cm 後方)を変えて行った。EMG活動は、左腓腹筋、左ヒラメ筋、および右大腿直筋から導出した.股関節角度は、ゴニオメータを使って記録した。左下肢の床反力は、鉛直方向(Fz)、水平前後方向(Fy)、水平左右方向(Fx)の力、および力の作用点を計測した。一般的に、右股関節の屈曲-伸展時において右大腿直筋と左腓腹筋のEMG活動は共同活動が相動的に起こり、位相の変わり目はともに活動が弱まった。この間、左ヒラメ筋は、持続的に弱く活動した。軽い負荷強度で速く動作を行った時のFyは、右股関節屈曲開始時では推進方向成分を示したが、屈曲から伸展へ移る時にブレーキ方向成分へと変化した。Fzは、抜重により屈曲から伸展へと移る時に最小値を示し、全体として3相性の波形を示した。軽い負荷強度でゆっくり動作を行った時のFyは、推進方向成分のみとなり、Fzの大きさの変化は少なかった。重い負荷強度で速く動作を行った時のEMG活動は、左腓腹筋と左ヒラメ筋で増大が見られた。Fyは動作中全ての位相で推進方向成分のみとなった。Fzは屈曲-伸展の位相の変わり目での抜重による減少が比較的少なくなった。接地位置を変えたことによる床反力には基本的な違いが見られなかった。以上のことから、トレーニング機器を使って短距離走の模擬動作を行う時には、負荷強度や動作速度の設定に注意しなければならないことが示唆された。