表題番号:1996A-315 日付:2008/03/22
研究課題情報型組織における組織原理と情報活用に関する事例調査
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) システム科学研究所(現アジア太平洋研究センター) 教授 平野 雅章
研究成果概要
 ドラッカーの論文『未来組織の到来』に代表されるように、情報技術の進展と活用によって、将来の組織は知識労働者が肉体労働者にとってかわる「情報型組織」になると一般に信じられている。ところが、実際にこの段階に達している組織は少ないため、現実の事例から情報型組織の運営法を学ぶこともできず、企業によってネットワーク組織などの実験が行われているのが現状である。他方、ドラッカーは当論文において、情報型組織の例として大学・病院・交響楽団を挙げているが、これら現存の専門家集団の組織原理の解明も必ずしも十分に行われているとはいえない。
 そこで、本研究の目的は、専門家集団の現実の事例を調査することにより、その組織原理について考察するための実証的知見を蓄積することにあった。
 まず、組織論をレビューし直して、情報技術のインパクトに留意しつつ質問票を設計するとともに、情報共有技術の利用体験を積み、その効果を実感した。また、会計事務所・コンサルタント会社から協力を得られる調査対象を5社選択し、データを整理した。さらにこの間、情報型組織の環境である「情報化社会」についてモデルを作って考察することにより、情報化社会が産業革命を遥かに越える大きな社会変動であることが明らかとなった。
 今後の課題としては、得られたデータから質問票を見直して、伝統的な組織原理との対比における情報型組織原理の実証データをさらに蓄積し、新しい組織原理について実証的な議論をする基礎を提供することが望まれる。