表題番号:1996A-310 日付:2002/02/25
研究課題宇宙環境におけるLET分布の直接測定法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学総合研究センター 教授 菊池 順
研究成果概要
 両面に互いに直交した16のストリップ電極を持ち、有効面積が2cm×2cm で厚さ500μmの2次元PSD(Position sensitive detector)を開発した。このPSDでは、電極間を抵抗でつなぎ、その両端またはいくつかの電極よりの信号をとることにより粒子の通過位置を検出することができる。電極間をつなぐ抵抗の最適値を求めるためにシュミレーションによる解析を行うとともに、まずα線やβ線を用いて評価試験を行った。この結果より、電気信号は抵抗分割の両端と中央の3点から取るのが比較的良好な結果を与えるとが判明した。この結果をもとにして、3枚のPSDをならべた検出器を制作した。3枚のうち2枚の検出器の同時計数をとることによって、粒子の入射方向を知ることができる、したがって入射粒子のLETを直接測定することが可能である。この検出器について、理化学研究所や放射線医学研究所の重イオンビームおよび破砕核を用いて、プロトンからアルゴンまでの粒子について、評価実験を行った。その結果いままで、不可能とされてきた放射線によるLET分布の直接の測定が可能であることが示された。ただし、プロトンやエレクトロンのようなエネルギー損失の少ない粒子については、まだ十分な結果が得られたとは言い難く、今後の改良が必要である。今後は、このような粒子についての、エネルギー分解能と位置分解能をよくすること、さらに全方向に対して均等な感度を持つ検出器、すなわち6枚の検出器を組み合わせて、有効立体角の大きな正6面体(さいころ)の検出器を作ることが必要である。