表題番号:1996A-305 日付:2002/02/25
研究課題人間科学部での英語教育に対する学生の意見についての調査
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 ロバート・グレイ
研究成果概要
 早稲田大学人間科学部での英語教育への取り組み方について研究の一環として、さきに1995年度の新入生550人に、英語を母国語とする教員が担当する16のクラスの最初の授業で、高等学校での英語の指導を受けた経験や、大学での英語の指導への期待について、アンケートによる質問に回答を求めた(注1)。今回は、これに続けて、その1年後の授業の最終日に、授業の内容や形態や教材や設備や試験などに対する評価について質問をし、約440人から回答を得て、その結果を分析した(注2)。
 これらに先立って人間科学部の語学担当以外の教員に対して行なった調査(注3)では、英語の読む・書くの能力向上を期待していたのに対して、学生は、授業の前に、話す・聴くの能力の方が重要であると考えていた。これは1年間の授業の後でも、変わっていない。また、英語をもっと上達したいという授業の前の意欲も、1年後にも保たれている。
 英語を母国語とする教員の授業に、多くの学生が良かったと思っているが、英語を話す機会を増やす、少人数のクラスにする、視聴覚教材や機器を活用するなどの要望も多く出されている。
 これらの学生に対する意識調査で得られたデータは、教員に対する意識調査のデータとも合せて、人間科学部でのカリキュラムの改訂や指導方法の改善などの英語教育の質の向上のための資料として、非常に役立つと考えられる。
 注1)ロバート・グレイ:人間科学部新入生の英語の授業初日における意識調査、人間科学研究、9(1),pp。1-7,1996。 注2)人間科学部1年生の英語の授業最終日における意識調査、人間科学研究、9(2),pp。69-73,1996。 注3)ロバート・グレイ:人間科学部における英語教育についての検討、人間科学研究、8(1),pp。27-60,1995。
 本研究は、早稲田大学人間科学部の英語教育に関する意識調査の第三報にあたる。第一報(1995)では、人間科学部の教員を対象とし、第二報(1996)では、英語1(ロ)を受講する新入生を対象として、その授業初日に調査を行った。第三報の本研究においては、第二報と同じく、英語を母国語とする教員による英語1(ロ)を受講した1年生の授業最終日に行われたアンケート調査の結果を分析し、第一・二報の結果と併せて、比較検討したものである。
 その結果、人間科学部の教員は、大学での英語教育に多様な期待を持っているが、聴く・話す能力よりも、読む・書く能力の向上を望んでいた。それに対して、1年生が英語の授業初日に期待していたのは、話す>聴く>書く>読むの順に高く、同じ学生がその授業の最終日に、期待していると述べたのは、話す>聴く>読む>書く、の順であった。
 また、学生達は、英語を母国語とする教員達に関して、概ね、学生達が期待する、話したり、聴いたりする機会を提供し、その能力を向上させる上で役立っていると評価していた。さらに、一年生の英語授業初日に顕著であった英語をもっと上達させたいという積極的な熱意(85%)は、一年生の授業最終日にも保たれて(83%)いた。
 そうした学生の期待に応え、更に英語を聴き・話す教育の質を高めていくためには、英語1(ロ)の1クラス当たりの人数を25名以下に減じること、学生自身が自ら話したり、聴いたりする練習を積むためには、ランゲージ・ラボラトリーの設備の改善や、使用される教室への視聴覚機器の配備・拡充の必要性が示唆された。