表題番号:1996A-304 日付:2002/02/25
研究課題沖縄八重山諸島における玉類の考古学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 谷川 章雄
研究成果概要
 沖縄本島のグスク時代及び先島地方の12~15世紀の遺跡から、石製・ガラス製の勾玉・丸玉・小玉などの玉類が出土する。しかしながら、こうした玉類の考古学的研究は現在までほとんど手つかずの状態にある。先島地方に限って見ても、下地馨によって勾玉に関する民俗資料・文献史料とともに、勾玉の形態・石質等に言及されたことがあったが、その後は白木原和美が問題にしているのみである。したがって、沖縄の玉類の考古学的研究は、製作技法の観察、石材の同定、ガラスの成分分析など基礎的な研究からスタートしなければならない状況にある。
 こうした現状を踏まえて、本研究では、沖縄先島地方のなかの八重山諸島出土の玉類について、基礎的な考古学的研究を行なった。実施した作業は以下のとおりである。
 1.これまでの発掘調査によって出土した玉類の集成およびその観察・実測・写真撮影
 2.伝世資料の観察・実測・写真撮影
 3.採集資料の観察・実測・写真撮影
 4.ガラス製勾玉・丸玉・小玉の成分分析
 5.石製勾玉の石材同定
 上述の作業を通して、いくつかの成果を得ることができた。まず第一に、石垣市教育委員会保管の発掘調査によって出土した玉類のなかに、未成品が含まれていたことが判明した。これは、ビロースク遺跡及び山原貝塚出土の勾玉で穿孔前のもので、形態からも明らかに未成品と考えられる。このことは石垣島で石製勾玉の製作が行われていたことを示している。
 また、ガラス製玉類の成分分析及び石製勾玉の石材同定を実施したが、現段階では対比資料が乏しいため、早急に結論を得ることは難しい。今後の資料の増加を待つことにしたい。