表題番号:1996A-301 日付:2002/02/25
研究課題達成文脈における援助行動の発達的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 青柳 肇
研究成果概要
 一般に、達成行動は他者との競争を含んだ行動であり、他者を助けるという援助行動とは相容れないものである。したがって、達成行動と援助行動が同時に生起するのは困難である。しかしながら、達成文脈中での援助行動は出現することが予想される。本研究の目的は、達成的文脈での援助行動生起の条件を探ることを目的に行われた。
 大学生男女計237名を対象に、以下の条件のシナリオを示し、それに対して「援助行動」を取るか、「被援助者に対する感情ー怒りと哀れみ」、「被援助者の責任」について被験者の対応を聞いた。実験は、between-subject法とwithin-subject法を混合して行った。すなわちシナリオにより大きく忙しさ(忙しいー暇)の次元で2分割し(between)、他の次元はwithinとした。就職試験(達成文脈)で、被験者が競争相手である被援助者に試験問題の解き方を教えるか否かというシナリオである。そのシナリオに含まれる次元は、忙しさ以外は、グループ(被援助者と同一グループか否か)、近親度、被援助者の努力度、援助行動を行うか否か、怒りを感じるか、哀れみを感じるか、責任はどの程度か、の4つであった。結果と考察は、次の通りであった。援助行動は、暇な時、近親度の高い、努力する方が、忙しい時、近親度の低い、努力しない、各々より多く行う。哀れみは、忙しい群が暇な群より多く感じている。忙しくて教えられないという行動を哀れみでカバーしていると捉えられた。また、近親度が、低すぎない場合には、努力度が関係し、努力する方に多く感じる。怒りは、忙しい群の方が大きい。忙しさが、怒りを生むと考えられた。また、近親度(低い方)と同様、努力度(低い方)が強い。責任は、暇な群の方がないとしている。忙しい方が、怒りを媒介に被援助者の責任を強く表すと考えられた。