表題番号:1996A-287 日付:2002/02/25
研究課題被災した住宅市街地の復旧過程と計画制度上の課題
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 助教授 早田 宰
研究成果概要
 阪神大震災の復興プロセスをもとに緊急時における都市計画制度の課題を明らかにする。
 制度を運用実態から検証するため、長田区野田北部地区・鷹取東第一地区を事例対象とした。理由は、7割が全壊という甚大な被害を受け、全面的都市計画が必要、震災前からの自治型地域組織の存在、震災前に地区のマスタープラン(以下MP)を未策定、震災後も既存の地域社会が中心になってまちづくり推進、の4点である。調査方法はまちづくり協議会への定期的なヒアリング調査によった。復興まちづくりは一般に事業先行型で、個別再建は、事業の成立が重視され、地区MPとの調整が難しい。MP策定済みの地区は震災後早期にその改訂作業に取り組むことで敏速な個別復興が開始可能だが、未策定地区は住民間の協議が混迷化し、不調の場合、復興後も無秩序な市街地を形成しがちである。野田北部地区では未策定であったが、早期の連絡体制の確立、個々の生活再建と地区復興の連携、等を地域主導でおこない、早期に計画をオーソライズできた。野田の教訓から、平時から地区レベルのMPを描いておくこと、平時から何らかの地域づくり活動の経験をなるべく蓄積させること、震災後はMPのたたき台の成立が急務であること、その後、たたき台を住民参加で段階的に合意すること、個別建築の無秩序な建設を地域主導で自粛すること、等の教訓がえられた。
 以上から、制度としては、仮説住宅の従前地への優先入居、建築制限令後の行政の違法建築監視活動と地域の個別建築自粛活動の連携、公的計画セクターの提案権と手続きへの住民参加、都市計画の段階的決定、等に改善すべき点を指摘することができた。