表題番号:1996A-285 日付:2002/10/11
研究課題地域計画のためのフロジェクト・オリエンティッド・ネットワーク情報支援システムの基礎研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 土方 正夫
研究成果概要
 近年、”まちづくり”の名の基に地域計画に対して様々なアプローチが試みられている。その中で、共通するキーとなるコンセプトは地域特性に基づく自律性であり、方法論としては参加あるいは参画が中心テーマとして掲げられている。参画型のまちづくりも、現在は参加による計画内容の質的向上をいかにして実現できるかが大きな課題であり、地域における情報通信基盤を視野に入れた新たなまちづくりの方法論が問われている。そこで本研究では集団問題解決過程におけるコミュニケーションという観点から地域計画の理論的基礎を構築することを第一の目的とした。
 まず、具体的な再開発事例をとりあげ、これを計画過程における情報とコミュニケーションという観点から改めて分析した。その結果、地域計画の分析段階と設計段階を繋げているものは文脈であり、地域の文脈は参加段階を通してはじめて具体的、明示的にとらえられるものであることが明確になった。更に、分析、設計、参加の機能を問題解決過程の中で位置づけ、各段階におけるコミュニケーションスタイルとその特性について分析を行った。この成果を基礎にして、第二の目的であるプロトタイプシステムの設計と実験を行った。このシステムはインターネット上で地域計画専門家、地方公共団体計画担当者、地域住民等が共働きしながら地域の文脈を形成することを前提にしたもので、文脈形成の基礎となるファクトデータの関連づけも可能となっている。このシステムをProject Oriented Data Base(PODB)と定義した。その特徴は、地域計画プロジェクト進行と同時並行で、地域計画の文脈が参加者の間で共有され、蓄積されてゆくことである。ここでは、地域の文脈形成に関わる質的な情報をデータとしてとらえている。
 また、既存の地域計画プロジェクトを対象にし、プロトタイプを用いた実験を行い、その結果を国際学会及び早稲田大学まちづくりフォーラム研究会等で発表した。情報公開の範囲や運営管理者の条件等今後研究すべきシステムの利用、運営上の問題点を中心に幾つかの課題が指摘されたが、国内外の研究者、地域計画専門家から一応の評価を受けることができた。来年度は、今年度の研究成果を基に実際の計画プロジェクトへの応用及びシステム運用上の課題について研究を進める予定である。