表題番号:1996A-283 日付:2002/02/25
研究課題地域における統合的環境政策の発展についての調査研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 坪郷 實
研究成果概要
 1990年代における地球環境問題への取り組みは、産業社会をエコロジー的視点から再構築することの必要性を明らかにした。統合的環境政策は、この産業社会を再構築しようとするものである。この統合的環境政策は、各政策領域において環境適合性という政策要素を統合するものであり、多次元レベルでしかも多様な担い手によって政策を展開するものである。
 昨年度からの継続調査として、今年度においては、地域(地方政府)レベルに焦点をあてて、東京都と都下自治体、大阪府と大阪市・豊中市などの環境政策の実態の調査を行った。調査では、自治体の環境基本条例の制定プロセス、環境基本計画の作成主体・実施主体、実施のための各部局間の調整体制、市民参加・職員参加の問題に重点を置いた。調査結果で注目すべき点として、さしあたり次の点を上げておきたい。環境基本条例に、環境権を規定している自治体、施策策定にあたっての環境優先の理念を規定している自治体(川崎市・埼玉県・豊中市)、さらに環境影響評価制度での計画段階の環境配慮や開発事業における環境配慮を実施している自治体もある。自治体においては、総合企画部門が重視されてきたが、現在は環境企画部門などのように、各政策領域毎に関連の行政施策を統合する個別領域における企画部門が必要になっている。実効性のある環境基本条例・環境基本計画を作るには、市民参加とともに、当初から行政内部における関連部局間の調整のための職員参加が重要である。この前提として、情報公開が必要である。さらに、環境政策の担い手は、地方政府のみならず、市民、環境団体、生協や環境保全のための市民グループ、地域の事業者、労働組合、青年会議所など多様である。行政がこのような多様な担い手と新しい関係(協働やパートナーシップといわれる)を作っていくためには、行政の意識や行政事務の手法が変わらねばならない。また、地域における市民の自発的活動を促進し定着させるためには、市民活動法人を作りやすくする市民活動促進法(NPO法)が不可欠である。