表題番号:1996A-282 日付:2002/02/25
研究課題日本の産業の国際競争力の決定要因に関する実証分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 浦田 秀次郎
研究成果概要
 本研究では日本の産業の国際競争力の歴史的推移とその決定要因を検討した。また、日本の産業の国際競争力とも大いに関係すると考えられる、日本企業の海外直接投資の行動パターンおよび日本のサービス部門における効率性のアメリカとの比較も行った。
 日本の産業の国際競争力は第二次大戦後の期間に大きく変化した。具体的には、日本の製造業の中で競争力を持つ部門は労働集約的な生産を行う部門から、資本集約的な生産を行う部門、さらには、技術集約的な生産を行う部門へと著しく変化してきた。以上のような国際競争力の変化は、産業政策や産業組織に大きな影響を受けていることが、実証分析から明らかになった。ただし、産業政策の効果は、産業の初期の発展段階においては大きかったが、しだいにその効果も減少している。近年、世界的に直接投資が急速に拡大している。日本においても、1980年代後半において海外への直接投資が著しく拡大した。国際競争力のある日本企業は輸出および直接投資の両方の手段を用いて、海外における販売を行っている。ただし、どちらかというと日本企業は直接投資よりも輸出を使う割合が高い。
 低迷を続けている日本経済は様々な問題に直面しているが、その中でも、政府規制による弊害が深刻な問題である。金融、通信、輸送などのサービス部門において、規制が民間企業の行動を制約し、非効率をもたらしていることが、ここでの分析から明らかになった。一般均衡モデル(CGEモデル)を用いたシミュレーションから、サービス部門における規制が撤廃され、生産効率が上昇したならば、日本のGDPを10パーセントも上昇させることが示された。また、サービス部門の規制緩和により、製造業部門の国際競争力が向上することも示された。
 以上のように、日本の国際競争力について、様々な視点からの分析を行ったが、それらの分析で用いられたデータはデータ入手可能性が限られていることから、産業レベルのデータであった。産業の競争力を明らかにするにあたっては、産業を構成する企業の競争力に関する分析が必要である。最近になって、企業レベルのデータが徐々に公開されはじめているので、それらの企業レベルのデータを用いて分析を行うことが今後の重要な課題である。