表題番号:1996A-272 日付:2002/02/25
研究課題新規分子内Diels-Alder反応の開発とその応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 中田 雅久
研究成果概要
 当研究室では癌治療薬として臨床的に使用されているタキソール類の全合成研究を行っている。そこで本研究では、そうしたテルペン系環状天然物の合成中間体として有用なシクロヘキサン誘導体をジアステレオ選択的に与え、かつ、不斉触媒を用いて反応を促進した場合、生成物を光学活性体として得ることのできるヒドロキサム酸誘導体の合成とその分子内 Diels-Alder 反応を試みた。
 ジエノフィルとジエンを NーO 結合により一体化したヒドロキサム酸誘導体の分子内 Diels-Alder反応はこれまでに全く報告例がなく、不斉触媒に配位する部分と新たに不斉炭素が生じる部分が近接しているため効率的な不斉誘起が期待されること、生成物も新しいタイプの化合物であるためその化学反応性についても興味がもたれることから本研究を行った。まず、計画した化合物のジエン部分の合成を既存の方法により検討したが、ペンタジエノールの重合、異性体の副生が起こりやすく低収率であった。また、そのヒドロキサム酸誘導体への変換においては、懸念していたLossen型の転移反応が併発し、アミン体の副生が認められた。低収率ながら得られたヒドロキサム酸誘導体を用いて分子内Diels-Alder反応を行ってみたが、分解が観察されたのみで環化生成物は得られなかった。分解生成物の構造解析からこの分解は、加温によりLossen型の転移反応が起こったためと推測されたため、現在、この分解反応を抑えるため、低温でルイス酸触媒存在下に反応を行うことを検討中である。基質の合成については、特にヒドロキサム酸誘導体の炭素ー酸素結合形成反応において、Lossen型の転移反応を進行させない条件下で行える反応の選択が必要である。そこで、温和な条件下にヒドロキサム酸誘導体の炭素ー酸素結合形成反応を行いうる光延反応を利用した合成ルートを検討中である。