表題番号:1996A-267 日付:2002/02/25
研究課題バイオレメディエーションを目的としたカルバゾール分解微生物の探索と利用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 桐村 光太郎
研究成果概要
 原油中に含まれる芳香族窒素化合物の代表的なものにカルバゾールがあり、石油精製の脱硫工程においても除去されずに残留する。このような有機窒素化合物は燃焼によりNOX生成の原因物質となるため、環境汚染防止の観点から除去方法の確立が望まれている。また、カルバゾールおよびその誘導体は染料や樹脂の原料としても使用されており、地下水や土壌への蓄積も明らかになり環境保全の観点から問題視されている。高等動物の臓器や神経に障害を与えるため、環境中に放出されたカルバゾールの効率的除去方法の確立も必要であり、バイオレメディエーションに期待が寄せられている。そこで、本研究においてはカルバゾールを分解する微生物を探索し、分解代謝経路を明らかにして能力を評価した。
 カルバゾールを唯一の窒素源とした合成培地を使用して5株の分解細菌を取得した。代表細菌CDH-7はグラム陰性で運動性を示し、細菌学的同定試験よりSphingomonas sp.と判明した。CDH-7は培養に伴い500mg/lのカルバゾールを2日間で完全に分解し、極めて優れた能力を有することが判明した。さらに培養過程ではアントラニル酸が検出されたものの最終的にはこれも消失し、アンモニウムイオンへと無機化された。カルバゾール分解代謝経路としては、ジオキシゲナーゼによる酸化反応を経て炭素・窒素間の結合が開裂してから芳香環が酸化され、アントラニル酸を経由してアミノ基がアンモニア態へと変化することが明らかになった。当該反応では有毒中間体の蓄積がない完全分解が可能であるため、CDH-7を休止菌体(増殖させない条件下で酵素活性を機能させる)反応に利用した。すなわち、30時間培養して調製した菌体を緩衝液で数回洗浄したのち、100mg/lのカルバゾールに作用させた場合、30分で完全に消失した。この反応は10回の繰り返しが可能で、約24時間活性も維持された。ケロシン(灯油)存在下での反応も速やかに進行した。