表題番号:1996A-264 日付:2002/02/25
研究課題見込み計算によるインタラクティブ・ソフトウェアの応答性改善法
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 上田 和紀
研究成果概要
 計算機の会話的利用の機会と重要性は最近ますます高まりつつあり、マルチメディア化も大きく進展している。しかし、ほとんどのインタラクティブ・ソフトウェアは、基本的に従来の決定的逐次プログラミング・パラダイムの下に記述されており、計算機性能の著しい向上にもかかわらず、利用者入力に対する応答性能が十分確保されていないことが多い。
 そこで本研究では、見込み計算(speculative computation)技法を中心に、利用者タスクとシステムタスクとの並行・並列処理、漸増的計算、実時間処理などの手法を援用することによって、インタラクティブ・ソフトウェアの応答性能を抜本的に改善する方法について検討を進めた。
 ネットワークニュースリーダを題材とした実験の結果、利用者の挙動を適切に予測して、コマンド入力後に必要となる処理を可能な限り見込み計算しておくことにより、応答性が大幅に改善できることが実証できた。見込み計算は、フロントエンドのニュースリーダとバックエンドのキャッシュシステムの双方で、各利用者および利用者集団全体の記事購読特性に基づいて行なっている。
 さらに本研究では、ニュースリーダでの良好な結果を、WWW記事のキャッシュシステムに適用することを試みた。
 WWWにおいては、応答性改善及びネットワーク負荷の抑制を目的として、キャッシュ機能を付加したプロキシサーバが使用されている。しかし、このキャッシュ機能は一度アクセスしたデータを再利用するだけのパッシブなものであり、新たなアクセスには応答性改善効果がない。また、どのデータがキャッシュされているかわからないので、キャッシュの恩恵は偶発的でヒット率の低いものとなる。
 そこで、プロキシサーバのキャッシュデータを各利用者毎に整理し、Webブラウザを通して視覚化した。また、キャッシュデータの最新性をバックグラウンドで確認してその更新状況を表示するとともに、今後読む可能性が高いと予測されるデータをトラフィックの少ない時間帯にプリフェッチし、その状況もあわせて視覚化した。一般に、WWW利用時の行動はニュース利用時の行動と比較して予測が困難であるが、見込み計算と視覚化機能との併用によって、良好な応答性能を確保できる見通しを得た。