表題番号:1996A-262 日付:2002/02/25
研究課題植物的なコミニュケーションと情報場の設計
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 三輪 敬之
研究成果概要
 植物の外界認識やコミニュケーションに関する知見は動物とは異なった生物的な自律システムの設計原理を与える可能性がある。しかしながら、脳や神経系、感覚器官をもたない植物が様々に変化する環境を自身といかに関係付け、生長や形態形成に役立てているのか余り分かっていない。また、個体間のコミニュケーションの有無も定かではない。そこで本研究では、植物の生体電位(DC成分)やリズム運動に着目し、器官集団や個体集団における相互作用を情報システム論的な観点からしらべた。主な成果は以下の通りである。
 1.エンドウの幼苗の茎先端部分を光刺激すると、刺激を受けた部分のみならず、主根先端部分においてもほぼ同周期のリズム運動が現われ、両者の間に位相関係が存在することを見出した。また、音刺激に対してもリズム運動が誘発されることを認めた。これらの結果は、環境情報が刺激箇所だけで局所的に処理されるのではなくて、相互引き込みにより植物体全体に共有されることを意味するものである。2.最大16本の幼苗を格子状に配列し生長挙動と生体電位変化を全自動計測できるシステムを構築した。本システムを用いて二三実験を行った結果、幼苗の生長速度は場所によって異なり一様ではないこと、さらに電位波形が類似するグループが複数存在することを明らかにした。また、このグループ形成と生長挙動との関係性について検討した。3.生体電位広域計測システムを用いて、野外における樹木集団のコミュニケーションについて調べた。その結果、自然林では同種、異種間において生体電位変化の相互引き込み的現象が起こり、時間経過とともに、樹木集団内にいくつものグループが動的、横断的に形成されることを見出した。4.以上の結果を基に、植物の個(部分)と集団(全体)との関係付けにおいて、情報の生成、共有がいかに行われるかを「場」と関連付けて考察した。