表題番号:1996A-258 日付:2002/02/25
研究課題往復動滑り軸受のスターブ潤滑に関する実験的・理論的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 林 洋次
研究成果概要
 往復動滑り軸受では、運動方向が逆転する死点のように相対滑り速度がゼロになるところがあり、そこではくさび作用による圧力発生が期待できないので、一方向に回転する普通の滑り軸受に比較して、その潤滑状態はきわめて複雑かつ過酷である。往復動滑り軸受の代表例はエンジンのピストンリングであり、実機では潤滑油の供給が不十分な状態のスターブ潤滑下で使用されるので、潤滑メカニズムの学問的な研究が近年特に重視されている。
 そこで、本研究は、複数の往復動滑り軸受の相互作用に着眼して、潤滑油膜の挙動を実験的に解明する試験機を開発試作して、往復動滑り軸受の潤滑油の供給状況や油膜生成消滅状態を測定し、これらを考慮した潤滑理論を展開することによって、各軸受の相互作用を解明して往復動滑り軸受の潤滑メカニズムを明らかにする。
 透明なアクリル樹脂で製作した1個ならびに複数の長方形ピストンリングを直動転がり軸受に装着することによって、きわめて実験精度の高い汎用往復動滑り軸受試験機を開発試作し、各時刻における油膜の生成消滅ならびに油膜破断現象を写真撮影した。この油膜の挙動を分析した結果、先行する軸受から排出される潤滑油が後続の軸受に流入するため、先行する軸受に対する潤滑供給量が少ない場合は、後続の軸受は厳しいスターブ潤滑状態になり、油膜長さや破断本数など油膜形状に複数軸受の連成効果が現れることを実験的に明らかにした。また、これらの相互作用を考慮した複数の潤滑方程式に対して、潤滑油が第1軸受から第2軸受へまた逆に第2軸受から第1軸受へと順次供給される時に、軸受間のすきまに保持される油量をも考慮して、各滑り軸受の油膜入口部および出口部における境界条件を新たに提案した。