表題番号:1996A-250 日付:2002/02/25
研究課題インジウム─スズ酸化物(ITO)電極の電気発光を利用した血糖値監視システム
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 酒井 清孝
研究成果概要
 現在、我が国におけるインスリン投与を必要とする糖尿病患者は20万人を超えており、簡易で携帯可能な人工膵臓の開発が期待されている。このような人工膵臓は血糖値の連続的なモニタリングが可能であること、監視システムが簡便であることが不可欠である。そこで、我々は過酸化水素とITOの間に生じる電気発光反応に着目した。血糖であるグルコースはグルコース酸化酵素と反応して過酸化水素を生成するため、間接的に血糖値を測定することができる。また、試薬を用いる必要がない定量法であるために、患者の体液を装置内に供給するだけで血糖値を測定することが可能である。しかし、この反応は再現性が低く、正確な過酸化水素濃度を測定することは困難である。そこで、測定方法、測定条件を検討することによって、電気発光の再現性、定量性を向上させることを試みた。支持電解質を含む過酸化水素水溶液を反応セル内に充填し、potentiostatを用いて陽電位を電極に印加した。このとき、得られた光子量の積算値を発光強度とし、過酸化水素濃度との相関関係を調べた。その結果、0-1.4-0Vの三角電位を印加したときに高い再現性が得られた。また、グルコース定量には過酸化水素を生成させるグルコース酸化酵素が必要である。酵素の活性は溶液のpHに強く影響されるため、電気発光のpH依存性を調べ、pH9以上で電気発光反応を生じることを確認した。また、グルコース酸化酵素の酵素反応を利用したグルコース定量の可能性について検討したところ、電気発光強度とグルコース濃度に良好な直線関係が得られ、糖尿病患者の体液を反応装置内に供給するだけで、直接的に血糖値を測定できることが示唆された。また、安定かつ高精度の過酸化水素センサ開発により、過酸化水素生成酵素との組み合わせから、グルコース定量だけでなく尿素やコレステロールなど幅広い応用が期待できると考えられる。