表題番号:1996A-245 日付:2013/04/25
研究課題人工臓器表面と血球破壊の関係の定量化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 梅津 光生
研究成果概要
 人工管路内を流れる血液に働く種々の外力が、血液中の赤血球破壊(溶血)に与える影響を定量的に評価することを目的として研究を行った。1995年度までの研究成果をもとに、内部表面粗さの異なる狭窄管、内径の異なるチューブ、角度の異なるベンド管を用意した。そして、従来の方式で牛血を循環させ、剥離域における壁面粗さ、血流中のせん断応力、二次流れやレイノルズ応力がそれぞれ赤血球の破壊に及ぼす影響を調べた。
 まず、内部表面粗さを0.2~17.5[um]で10段階に変化させた狭窄管を作成した。これを用いた実験では、剥離域の壁面における表面粗さが3[um]程度以下の時に溶血が起こりやすく、4[um]程度以上の時は溶血量は一定の値に収束した。次に、チューブ内径を4.8~12.7[mm]で5段階に変化させた実験では、その溶血量はチューブ内径に反比例し、壁面近傍のせん断応力が影響することが分かった。また、ベンド管の実験では曲がり角度が急なほど溶血量が増えるが、その値は実用的にはほぼ無視できることが判明した。
 総合的には、せん断応力による溶血よりも血流の壁面との衝突による溶血が大きくなる傾向があったが、牛血の個体差による実験誤差も大きく、今後の研究ではこの点の再考が必要である。