表題番号:1996A-243 日付:2002/02/25
研究課題植物系バイオマスの有効利用を目的としたデンプンからのクエン酸生産技術の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 宇佐美 昭次
研究成果概要
 バイオマス資源の有効利用技術開発の重要性については広く認識されているが、バイオマス系原料からの有用物質生産技術は定着していない。そこで本研究においては、植物バイオマスに多量に含まれるデンプンからのクエン酸生産について検討し、高収率の生産方法を確立した。さらにバイオマス中のキシランの利用と、イタコン酸生産に関する研究を合せておこなった。
 まず、アミラーゼ生産性を高めることを目的として、クエン酸生産性の高いAspergillus nigerより2-デオキ・シグルコース耐性変異株を誘導した。優良株C192を選択し、140g/lの可溶性デンプンを含む培地で液内振とう培養を行い69.5g/lのクエン酸生産に成功した。これは原株の1.54倍の生産量であった。つぎにトウモロコシデンプンとバレイショデンプンをそのまま炭素源とした半固体培養のようるクエン酸の発酵試験を行った。諸条件を検討して最適化し、200g/lのデンプンにより107.4g/l(トウモロコシ)または92.9g/l(バレイショ)のクエン酸が3日間で生産可能となった。これは従来の報告を凌ぐ最高の生産性である。なお、クエン酸生産菌A.nigerとデンプン分解酵素生産菌A.awamoriの種間プロトプラスト融合によっても新規な雑種株を作成することに成功した。当該雑種株もデンプンを炭素源とした半固体培養によって、収率50%以上の生産性を示した。同様の方法をA.terreusA.usamijに適用した場合には、10-5~10-4の融合率で雑種株が得られた。安定な生育を示す雑種株より選択したF-112株は、可溶性デンプン120g/lから35.9g/lのイタコン酸を生産した。従来、デンプンから直接イタコン酸を生産可能な菌株は存在しなかったため、細胞融合法により新規かつ有用な生産菌が作成可能なことを示すことができた。植物バイオマスからのクエン酸生産には、デンプンの他にキシラン等の分解も必要であるが、キシランからのクエン酸生産も可能であった。