表題番号:1996A-236 日付:2002/02/25
研究課題組織能力と個人のスキル
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 助教授 藤田 誠
研究成果概要
 本年度は、上記の研究課題のうち組織能力に注目して、主に文献サーベイの形式で理論的な概念枠組の整理を行った。その成果はすでに「企業評価と経営資源・組織能力」(『税経通信』第52巻第5号(1997年4月)、161-167頁)という論文で発表済みである。その要約は以下のとおりである。
 従来の経営戦略論では、「戦略的なポジション」が企業の収益性、有効性を規定する要因として注目されてきた。つまり、いかなる業界(事業分野)に進出するか、あるいはその業界内でいかなる競争戦略を採用するかといった戦略的意思決定が重視されてきたのである。これに対して、近年「経営資源」ないし「組織能力」が企業の収益性、有効性の規定要因として注目されるようになってきた。
 経営資源を企業の成長要因の1つとみなす理論は、経済学、経営学の分野では決して目新しいものではないが、会計上の資産と経営資源、組織能力との相違が厳密に論じられることなく現在に至っており、概念定義自体が曖昧なまま研究が続けられてきたのが実状である。そうした現状を踏まえて、上記論文ではまず会計上の「資産」概念と経営資源概念とを比較した。会計学における動態的・経済的な資産の概念規定を採用した場合、会計上の資産と戦略論でいうところの経営資源とはかなり類似した概念となる。ただし、現行制度会計上では貨幣額による測定・表示に馴染まないものは資産に含められないのに対して、経営資源にはそうした側面も含まれる、という点で概念上の差異が認められる。さらに、組織能力とは経営資源を開発、蓄積、活用する潜在力と定義できる。こうした概念規定を出発点として、経営資源と組織能力の包括的な測定尺度を開発することが、今後の研究課題である。