表題番号:1996A-235 日付:2002/02/25
研究課題水銀化合物による特異的破壊法を用いた緑色細菌型光化学反応中心鉄硫黄センターの研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 助手 楠元 範明
研究成果概要
 緑色硫黄光合成細菌の反応中心(PS-C)における電子伝達は、反応中心の酸素感受性が高いために精製された試料の調製が困難で最近まで研究が遅れていた。われわれは、試料調製の全過程において嫌気性の維持に細心の注意を払うことにより、好熱性の緑色硫黄光合成細菌Chlorobium tepidumから活性の高いPS-Cの調製に成功した。この標品は5種のサブユニットにより構成され、連続光により還元される3つの鉄硫黄センター(CFA,CFB,CFX)を持ち、閃光によって酸化されるシトクロムを結合していた。高等植物の光化学反応系I(PSI)粒子においては、塩化第2水銀処理により3種の鉄硫黄センター((FA,FB,FX)のうちFBのみを選択的に破壊する方法を当研究室で開発している。同様な方法によりPS-Cにおいても鉄硫黄センターが選択的に破壊されるかどうかを検討した。我々は極低温EPRでCFBB-由来(4K連続光照射による、(条件1))、および(CFA+CFB)2-よび(CFA+CFB)2-由来(連続光照射をしながら凍らせる(条件2)もしくは化学的還元条件下(条件3))のそれぞれのスペクトルを既に得ているが、後者のスペクトルは2つの成分のインタラクションフォームであると考えられている。水銀化合物を用いてCFAもしくはCFBを選択的に破壊することができれば、(条件1)下ではCFBのスペクトルが観察されるかもしくはスペクトルが観察されないことが期待された。そこで塩化第2水銀の濃度・処理時間を変え、極低温EPRにより鉄硫黄センターを測定した。しかしながら処理により(条件1、2)下ではスペクトルが観察されず、鉄硫黄センターの光還元活性が失われたと考えられたので、(条件3)下で測定を行った。その結果、濃度・処理時間に応じて段階的にCFA+CFBのスペクトルが全体のプロフィルは変えずに大きさが変化することがわかった。このことから、塩化第2水銀は非選択的に鉄硫黄センターを破壊することが示唆された。