表題番号:1996A-226 日付:2002/02/25
研究課題PC-UNIXを用いた変成岩岩石学のための総合化相平衡関係計算システムの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 小笠原 義秀
研究成果概要
 変成岩岩石学の分野においては、変成作用の条件解明のために P-T図、TーX図、T-Xco2図等々の多種多様な相平衡図が活用されている。これらの相平衡図は鉱物の共生関係を基に変成作用についての論議を深めるうえで極めて重要な役割を果たしている。通常、研究者は公表された相平衡図を引用して変成作用の条件推定を行うことが多いが、本来ならば研究者自信が、特別なプログラミングをすることなく、自由に熱力学データを選びながら、自らの手で必要とする相平衡図を得ることが望ましい。このような環境をパーソナルコンピュータ上に実現することを目的として本研究は行われた。
 筆者がこれまでにUNIXワークステーションで開発してきたシステムTHERM を背景に、機能を大幅に修正・付加して、PC-UNIX 用システムで稼動するバージョン3を作製した。Solaris2.5 用のバージョンについては、主要部分の開発が終わり、圧力 10GPa までの P-T図・logfo2-T図・T-Xco2図等の計算および X-Window によるグラフィックス表示が可能である。当初予定していた Linux 専用のバージョンは、これまでのTHERM システムの骨格部分・グラフィックス部分に大幅修正が必要なこともあり、メニュー形式インターフェース部分と一部の計算機能のみが利用可能な状態である。他の多く部分は次年度以降に課題を残した。本研究で得られた Solaris2.5 用バージョンを用いて計算された主な結果は以下の通りである。1)上部マントルの超苦鉄質岩・炭酸塩岩中でのダイアモンドの酸化還元安定性(Russian Geololgy & Geophysics,vol.37)、2)ダイアモンドを含む鉱物組み合わせの安定関係とその全炭素含有量依存性(30th IGC at Beijing)、3)超高圧変成帯のドロマイト質マーブルにおける鉱物の安定関係とくに岩石中での Xco2 環境の効果(Eos Transactions,vol.77;The Island Arc,vol.6,in press)。