表題番号:1996A-221 日付:2002/02/25
研究課題「亡命ロシア」の現在
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 川崎 浹
研究成果概要
 今年(1997)下半期に研究成果をまとめて1冊の本にする予定である。表題は『ロシア人の「自由」-海外ロシア人を通して-』
 本書は全5章から成り、第1章の反体制活動家ブロフスキイについては、6、70年代の国内での活動と、78年に国外に出てからの動きを早稲田大学教育学部研究(1996、3)にまとめた。第2章は「コンチネント」誌編集長、作家マクシーモフの亡命と国外での活動について触れ、97年3月の比較法史学会で報告、早稲田大学大学院文学部紀要(97、3)に掲載した。さらにマクシーモフと亡命作家・パリ大学教授シニャフスキイとの確執に光を当てることで、亡命ロシア知識人と旧ソ連体制との複雑な関係を探り、この成果の一部を教育学部学術研究(97、3)に掲載した。第3章では作家エドアルド・リモーノフの在米中の問題小説『ぼく、エージチカだ』と、92年帰国してからのポスト・ベレストロイカのロシアでの政治的、社会的活動について、枚数を縮小して「同時代」誌(96、11)に発表した。第4章ではソルジェニーツィンの対西欧観と帰国、作家アクショーノフにおける前衛と伝統の係わりを扱う。第5章ではアレクサンドル・ゲニスの『失楽園』を中心に米国滞在の亡命ロシア人の全体像、ならびに新世代を代表するゲニスのロシア観に触れる。国内の政治事情で国外に出ざるをえなかったロシア知識人たちが、ペレストロイカの到来とともにどのような言動を取るに至ったかに触れ、本国の動乱に対する彼らの反応を跡づけることで、同時に本国ロシアでの事件を逆照射したい。またロシア人にとっての「自由」が西側世界の自由とは異なるものであることを証明したい。