表題番号:1996A-218 日付:2002/02/25
研究課題八幡縁起の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 助教授 吉原 浩人
研究成果概要
 古代・中世八幡信仰の研究は、近年活発に行なわれているが、歴史的視点からの研究が多く、八幡の由来を記した原史料への関心度はいまひとつといえよう。つまり、八幡信仰関係の縁起や記録類を史料として活用はするものの、原典それ自体への分析・研究がなおざりにされることが多いのである。そうした傾向を打破するためには、まず原史料を忠実に読み解いていくことが肝要である。
 本研究は、幅広い視点から総合的に八幡縁起を考察することを目的とするが、具体的には、数ある縁起の中から、鎌倉初期に編纂された八幡縁起の集大成『諸縁起』(石清水八幡宮史料叢書第二巻所収)を選んだ。本書は、従来は石清水八幡宮蔵本(重要文化財指定)が知られていたが、冒頭部分が欠失していた。ところが、今回の研究の過程で、本書の写本が別の書名で、龍門文庫・島原松平文庫・内閣文庫なでに蔵されていることが、新たに明らかになった。このうち、島原松平文庫・内閣文庫については、調査を行い、書誌的な成果を挙げることができた。
 同時に、本書所載の縁起類約三十篇のうち約十篇に、大学院生の協力を得て、註釈を施し、個々の作品成立の背景を考察することができた。なお、全篇に註釈を施すのは、一年間では不可能であり、当初の計画でもそのように記しておいたが、幸い1997年度特定課題研究においても、研究の継続が認められ、残りの部分についても訳註を作成しつつある。
 その成果については、全体を終了した時点で、単行書として公刊する予定であるが、様々な課題も多く、一部は先行して雑誌論文の形で発表したい。また『諸縁起』全文の電子化は終了しており、大学院生原克昭氏の作成した詳細な八幡信仰関係の研究文献目録とともに、希望者にフロッピーの形で配布している。