表題番号:1996A-213 日付:2002/02/25
研究課題韓国にある前方後円形憤の比較研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 岡内 三眞
研究成果概要
 昨年度、早稲田大学の特定課題研究計画が認められ、補助金を得て「韓国にある前方後円形憤の比較研究」を実施した。
 まず4月から関連資料の収集をはじめ、6月末にはほぼデータをまとめて一通りの整理を終えた。7月には2週間にわたって韓国に赴き、現地での遺跡踏査、大学や博物館での遺物調査を実施した。また韓国の研究者と情報交換や討論を行い、調査の現状を把握するとともに相互の意見交換をおこなった。その結果、報告書や論文に記されている以上に研究は進展し、新たな事実が数多く発見されていることが解った。このために従来の資料に新たな情報を加えて、遺跡、遺構、遺物の分析と比較とを開始した。さらに9月には中国北京での研究集会に参加して、学会発表を行うとともに情報の交換を行った。10月以降は、これらの資料と情報をもとにしてさらに研究を深めて行った。その結果10基以上の前方後円形墳が候補として挙げられ、そのうち9基までは現地調査をして確認できたが、残る数基についてはまたの機会に譲らざるを得なかった。確認できた9基のうち5基までは、韓国の考古学研究者によって発掘が行われている。各研究機関で遺物や遺構に関する情報を調査させて戴いた。その結果、立地、墳形、規模、築造方法などから、チャラボン古墳、マルムドム古墳、海南長鼓山古墳、咸平長鼓山古墳、月渓古墳、新徳古墳、月桂洞1号墳、月桂洞2号墳、明花洞古墳の順に作られたと考えるに至った。また出土遺物は、前方後円形墳が造られた韓国西南部で製作した文物が多い。しかし中にはこの地域以外の錦江流域(百済)や洛東江流域(加耶)、日本列島(倭)からの伝来、影響を予測させるものがある。このように東アジアを通じての交流の輪の中に組み込んで把握する必要が明らかになった。現地調査と研究者との交流、情報の公開などで多くの成果を挙げることができた。成果については、報告書と論文を準備中である。