表題番号:1996A-212 日付:2002/02/25
研究課題乳児をもつ母親の養育意識に影響する要因に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 大藪 泰
研究成果概要
 【研究目的】乳児が4ヶ月の時点で育児満足感を調査した母親に、10ヶ月の時点でも再調査し、両時点での母親の育児満足感得点の変動に影響する要因を事例を用いて検討する。
 【研究方法】
 ・研究対象者
 乳児の月齢が4ヶ月と10ヶ月の両時点でアンケート調査に回答した142名の母親から以下の手順で選ばれた19名であった。
 まず10ヶ月の時点でのアンケートで「面接調査」が可能と回答した者は50名であった。次にこの50名の中から、育児満足得点上昇群、下降群、高得点安定群、低得点安定群を一定の基準で分類し30名を選択した。この30名に対し、面接調査を郵便で依頼した。その結果、最終的に面接が可能になった者は19名であった。
 ・面接調査
 面接日時を連絡調整し、対象者の家庭で面接を行った。面接は、その場での筆記とテープ録音で記録された。テープの録音は対象者の了解が得られている。面接時間は平均50分程度であった。
 【研究結果】各群の典型事例の特徴を示す。
 <得点上昇群の事例>4ヶ月児段階での育児満足得点は平均値、10ヶ月段階で高得点へ上昇。社会での仕事疎外感が両月齢ともに低い。夜泣きがなくなり、夜ぐっすり眠れるようになっている。夫婦関係がきわめてよい。
 <得点下降群の事例>4ヶ月児段階での育児満足感は高いが、10ヶ月段階では平均値以下に低下。社会での仕事疎外感が両月齢できわめて高く、かつ10ヶ月で一層上昇。夫婦の精神的な絆は高いが、夫の育児家事への協力度が10ヶ月で低下。
 <高得点安定群の事例>両月齢ともに育児満足得点は最高点を維持している。仕事疎外感が低い。自分の性格を落ち着きがきわめてあり、自己評価も非常に高いとみなしている。夫の協力度も夫婦関係も平均得点を示したが、面接ではやさしい夫と述べている。
 <低得点安定群の事例>両月齢ともに育児満足感は非常に低い。両月齢ともに仕事疎外感がきわめて高く、社会で仕事をすることへの希望が強い。10ヶ月では自己評価も低下している。また、夫との精神的な信頼感も全体的に低いが、10ヶ月では極端に低下している。