表題番号:1996A-204 日付:2002/02/25
研究課題コーポレイト・ガバナンスとフランス会社法
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 鳥山 恭一
研究成果概要
 わが国では現在、「コーポレイト・ガバナンス」という標題で、日本企業の管理運営のあり方をめぐって議論がなされる場合が少なくない。「コーポレイト・ガバナンス」ということの内容は必ずしも明らかではなく、また、そのような問題として議論される対象について、論者の間で完全な意見の一致があるとも思われない。
 しかし、「コーポレイト・ガバナンス」の問題として議論される内容は、ほぼ、つぎの二点に集約できるように思われる。すなわち、第一に、株式が公開されているような大企業において、株主、債権者、従業員、消費者、周辺地域住民などの関係者(stakeholders)の利益を制度上どのように位置づけるかという問題であり、第二に、株式が公開されているような大企業における管理運営の機構の問題である。
 以上のような「コーポレイト・ガハナンス」の議論は、まずアメリカで盛んに行なわれるようになった。その背景にはとくに1980年代における敵対的な企業買収の盛行があり、また、アメリカ法律協会(American Law Institute)による≪Principles of Corporate Governance: Analysis and Recommendations≫の作成・公表が議論の契機となっている。このようなアメリカの議論の影響を受けて、フランスでも≪Corporate Governance, ou le Gouvernement d'Entreprise≫の標題のもとで、そのような形で議論することの是非も含めて盛んに議論がなされている。そこでは、株式会社における機関相互間の権限配分の問題がとり上げられる場合が多い。そして、この種の議論の影響も受けて、現在、フランスでは、商事会社法の全面的な見直しのための作業も進められている。私の作業はいまだフランスにおける各論者の主張を検討する段階にとどまっているが、それらを整理し、会社法改正作業の進展とも関連づけたうえで、早急に研究成果を公表したいと考えている。