表題番号:1996A-201 日付:2002/02/25
研究課題経済制裁の戦略的含意に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 山本 武彦
研究成果概要
 第二次世界大戦後、主権国家体系としての国際システムにおいて国家(群)が他の国家(群)に対して行使する制裁行為は、軍事力に訴えるよりも非軍事的措置、なかでも経済的諸措置に訴える形で実践される機会が格段に増えた。本研究では、物理的強制力行使の一手段としての経済制裁が横行するようになった原因を究明するとともに、自救システムを構造的特徴とする現代国際システムにおいて経済制裁行為のもつ戦略的含意について考察を加えることが目的とされる。
 研究対象は、第二次世界大戦後に実施された多国間レベルと二国間レベルの経済制裁に絞り込み、事例ごとに原因と結果、費用対効果を可能な限りデータ化し、分析する。さらに、冷戦時代におけるイデオロギー対立の文脈から整理できる制裁事例(例:ココム(対共産圏輸出統制委員会)を通じた戦略的禁輸の制裁や対ソ連経済制裁)と他の要因に基づく制裁事例(例:南アフリカ経済制裁、アラブ・ボイコットなど)とに分け、それぞれの経済制裁行為に内包された戦略的インプリケーションを分析する。そして、ポスト冷戦の時代における経済制裁、とくにアメリカの指定する「ならず者国家(rogue states)」をターゲットにした経済制裁(例:多量破壊兵器および高度通常兵器関連技術の禁輸、イラン、イラク、リビアなどを対象とした制裁の実施など)や中国など、冷戦後の潜在的脅威の源とみなされている国に対する経済制裁に含まれた戦略的含意を分析し、冷戦時代の経済制裁行為との比較を通して経済制裁行為の国際政治学的考察を深めることに努めた。
 本研究の部分的成果としては、「不拡散レジームと国際安全保障-通常兵器移転規制を中心に」(『国際問題』第436号、平成8年7月号、30ー44頁)がある。