表題番号:1996A-190 日付:2002/02/25
研究課題世代間規格競争におけるデファクト・スタンダードの獲得についての研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) システム科学研究所(現アジア太平洋研究センター) 教授 山田 英夫
研究成果概要
 デファクト・スタンダードをめぐる競争には、同一世代内で展開される世代内競争」と、世代間で技術の代替をめぐって展開される「世代間競争」 があるが、これまでの研究は、前者に焦点をあてたものが多かった。本研究は、後者に焦点をあてたものである。
 具体的には、「機能をほぼ同一とする旧世代製品と互換性のある規格製品と、互換性のない親規格製品とが同時に登場した場合に、世代をまたがったネットワーク外部性のため、互換性のある規格が優位に立つ」という仮説を立証する所から始めた。事例研究として、デジタル録音機器(MDvs.DCC),カメラ一体型VTR(8ミリビデオ .VHS-C)をとりあげ分析した結果、互換性を維持した規格がデファクトを獲得できず、逆の結果になっていることが明らかになった。
 この結果の解釈として、世代間競争の場合には、ユーザーにおいて「互換性とパフォーマンス水準」のトレードオフが生じるが、大幅にパフォーマンス水準を上げた親規格の場合には、たとえ互換性を維持していなくても採用に至ることがわかった。
 この結果をベースに考えると、デファクト・スタンダードを獲得したリーダー企業は、その規格が成熟期に入り、次世代の規格が見えてくると、旧規格と新規格とをつなぐブリッジ・フォーマット(旧世代と新世代の両方に互換性をとった規格)を提案するケースが多いが、その戦略の成功には前提条件があると言える。すなわち、その新技術が旧技術に対してIncremental Innovationの場合には、旧規格のネットワーク外部性がはたらき、ブリッジ・フォーマットは有効な戦略となるが、Radical Innovationの場合には、旧規格のネットワーク外部性ははたらかず、規格の延命は失敗の可能性が高く、むしろリーダー企業が次世代の規格の出遅れてしまう危険性が高いと言えるのである。