表題番号:1996A-176 日付:2005/03/29
研究課題不安定原子核のベータ崩壊とその応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 橘 孝博
研究成果概要
 近年の原子核物理学は、各種実験装置の進歩やテクニックの向上により、ベータ安定線から遠く離れた原子核を対象として、研究が盛んに進められている。つまり原子核の研究は、安定核と比較して陽子数または中性子数を過剰に持つ不安定原子核の領域にまで広がっている。
 このような不安定核種領域では、実験の情報が「質、量」ともにまだ不十分で、原子核に関する実験サイドからの寄与は極端に少ないのが現状である。したがって、その多くの部分は何らかのモデルを用いて、理論で推定しなければならない。
 本研究では、このような安定核領域から遠く離れた所でのベータ崩壊を研究対象の中心に置き、これまで、われわれが研究、開発してきた「ベータ崩壊の大局的理論」の改良を行った。
 まず、「大局的理論」で本質的に重要な一粒子強度関数に含まれるパラメータ値を確定した。このパラメータ値を用いて、ベータ崩壊の半減期を全核種領域で計算した。これらの推定半減期は日本原子力研究所の「1996年度版核図表」として出版される予定である。
 次に、「大局的理論」の改良版として「半大局的理論」を提案した。そこでの一粒子強度関数は「大局的理論」で確定された関数型やパラメータ値を参考にしている。この「半大局的理論」ではベータ崩壊の親核に関してのみシェル効果やペアリング効果を微視的手法で入れている。
 また、ベータ崩壊する核子のスピンパリティも考慮している。これらの改良により、半減期等の理論値が原子核のマジックナンバー近くでも改善された。
 今後の予定としては、「半大局的理論」による遅値発中性子放出の計算などを行い、天体における元素合成の研究に応用していく。