表題番号:1996A-166 日付:2002/02/25
研究課題段違い平行棒における後方車輪のできばえと関節で発揮されるパワーの関係
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 専任講師 土屋 純
研究成果概要
 本研究は、段違い平行棒における後方車輪の実施中に、股関節、肩関節で発揮されるパワーの動態と、関節でなされる力学的仕事の大きさを明らかにし、後方車輪の速度を増加させるためにはどのような身体動作が要求されるのかを運動力学的な側面から検討することを目的とした。
 対象とした運動を撮影したビデオテープから、身体の9つの計測点の時系列2次元座標値を求め、この座標値により身体を8つのセグメントからなる剛体リンクモデルとみなし、股関節と肩関節で発揮されたトルクを求めた。さらにこのトルクに関節の屈曲伸展の角速度を乗じて関節で発揮されたパワーを算出し、さらにパワーを時間積分することによって関節でなされた力学的仕事を算出した。
 その結果、次のことが明らかとなった。1)後方車輪実施中に股関節、肩関節で発揮されたパワーは、すべての被験者で大きなピークを示し、多くの被験者でそれに続く小さなピークを示した。この最初のピークを示すパワーは、いわゆるあふり動作によって発揮されたものであり、2番目のピークはあふり動作とは正反対の動作によって発揮されたものであった。2)関節でなされた力学的仕事と後方車輪の回転速度との関係を見ると、肩関節、股関節とも、あふり動作によってなされた力学的仕事と後方車輪の回転速度との相関は見られなかった。これに対して、あふり動作とは正反対の股関節伸展、肩関節屈曲動作でなされた力学的仕事と、後方車輪の回転速度とはそれぞれ負の相関が見られた。3)後方車輪の運動課題をすでに十分解決できる選手に対して後方車輪の回転速度を高める指導を行う際には、あふり動作の強さよりむしろ、その後のあふり動作と逆の動作(股関節の伸展と肩関節の屈曲)の抑制を強調することが重要であると考えられた。