表題番号:1996A-149 日付:2002/02/25
研究課題放電プラズマの非線形現象の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助手 松永 康
研究成果概要
 放電プラズマの電流電圧特性は、一定の条件下で遷移現象を示しS型のヒステリシス曲線を描く事が多い。そして特定のパラメータ値では、自励系、駆動系、いずれも電流不安定性に関するカオスが報告されており、更に駆動系では低周期倍化現象が観測されている。
 この駆動系の非線形振動のモデルとして、弱電離状態での非線形ポテンシャル中のイオンの運動に注目して数値解析を行い、パラメータ励振とポテンシャルの非対称性が原因で、カオス的振動が起こることを説明した。理論的に導入した静電ポテンシャルは、デバイ遮蔽の影響を残しているためプラズマ内部には陰極からの電位変動が伝わらず、通常の強制振動モデルとは異なる特徴を持つ。また周辺の電位よりプラズマ電位が低い静電ポテンシャルのプロファイルは実験的にも支持される。
 次に、遷移を起こす放電特性の解析として、エネルギー変化(温度変化)と密度変化を結合させる多重定常状態モデルを提案した。エネルギー変化としては、ジュール熱、中性粒子との衝突によるエネルギー散逸、電離による散逸、プラズマから周辺への散逸を考慮した。反応方程式は以前から検討している自己触媒型(ロジスティック型)を用いた。電離係数の温度依存性をアレニウス型にすると、多重定常状態が存在すること、その条件は主にジュール熱の生成と周辺へ散逸する係数の比に依存すること等がわかった。このモデルで重要な量は周辺への散逸係数(熱伝導係数)と周辺プラズマの温度であり、現象を熱力学の概念だけでとらえるのではなく、散逸系のエネルギーバランスの問題と解釈すべきことを示している。従って、プラズマ・シース物理に固有の問題の可能性が高い。なお、弱電離プラズマの場合は熱伝導係数が密度に依存するので、モデル適用の制限が必要である。プラズマ・シース系の非線形現象は、核融合プラズマ、プロセスプラズマでも注目されている分野であり、この結果は大変示唆に富んでいる。