表題番号:1996A-142 日付:2009/04/03
研究課題占領軍側史料の収集・分析による占領期の東京の接収地と都市空間に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助手 佐藤 洋一
研究成果概要
 近代以降の東京の歴史を概観すれば、占領期(1945~1952)の都市空間の変化は、現在の都市東京の特質に大きな影響を与えていると思われるが、その実態は不明瞭である。都市自体が占領されているという状況と制約の下でのみ戦災復興も成り立っていた、という二面性を捉えない限り、この時期の都市空間の問題は本質的に理解できない。そこで、占領軍側の都市空間への行為という観点からこの時期の事象を捉えようとするとき、大きく、占領軍側が直接的に改変、形成、利用した空間、占領軍側の規制、誘導等により改変、形成などがなされた空間、の2つのカテゴリーに属する問題を明らかにすることが必要となる。これらを明らかにしていくのが本研究の目的である。
 96年度は上記の課題に関連して、これまでにNational Archives of United States新館などで以下の占領軍側の史料を収集した。
 1)占領軍側作成の占領期の東京の地図、約50点(SCAP文書AG群)
 2)占領期の東京における都市空間の写真(RG111-SC Army Signal Corp 1941-54)以下の対象を撮影している写真(1645点)を収集。(・接収地・接収建物、・接収住宅、・占領軍家族向住宅、・街路を中心とした都市空間、・皇居前広場、・闇市・掘割、・公衆衛生調査、・その他の都市景観)
 3)東京における接収住宅関係図面・文書(AMS他約400点)これらをもとに、以下の内容を明らかにした。
 ・都内の接収地リスト及び分布図
 ・都内の接収住宅のリスト及び分布図
 ・占領軍家族向住宅建設の計画上の特質
 ・写真から見る占領期の都市空間の形成に関する若干の考察
 なお96年度における地誌的な調査の結果を適切に記述していった上で(97年7月末までに成果報告書を完成予定)、97年度は占領軍による都市空間形成・利用に関する規制・誘導策を中心に調査を継続する。・占領期における接収が占領政策遂行上どのような意図のもとに行われてきたのか、・接収地との関係から捉えられる戦後の都市計画の特質はどのようなものか、を明らかにすることが一応の到達点となる。