表題番号:1996A-129 日付:2002/02/25
研究課題魚眼石鉱物を出発物質とする新規珪酸塩ミクロポア素材の開発と利用に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 山崎 淳司
研究成果概要
 層状ケイ酸塩鉱物である魚眼石(apophyllite、理想化学式KCa4Si8O20(F,OH)・8H2O)は、主にスカルン鉱床内に脈石鉱物として比較的多量に産する層状ケイ酸塩鉱物であるが、有価金属などを含まないために、採鉱・選鉱の過程で全て廃棄されている。しかし、この魚眼石を酸処理することにより特異な構造を有する含水層状シリカ(シリカーAP)が調製できることが知られている。
 本研究では、まずこの酸処理の際に、酸の種類、反応温度、反応時間、攪拌方法などの条件と、各種陽イオンの溶出挙動および結晶状態の経時変化の関係を検討した。この結果、氷点温度、開放系での塩酸処理により、最も残存イオンが少なく結晶性の良好なシリカーAP単相が得られることが確認された。29Si-MASNMR測定などの結果から、このシリカーAPの結晶構造はシリカシート間が一部縮合するものの基本的には魚眼石のシリカシート構造をそのまま維持していること。また、酸処理後のアルコキシド処理により、層間の膨潤性が付与されることがわかった。一方、魚眼石の粉末試料にアルミニウム塩化物溶液処理を行なうことにより、層状構造をもついくつかのアルミノケイ酸塩相を調製することができた。27Al-MASNMRなどの結果から、この相は主にAlO4四面体がシリカーAPのシリカシート間に導入されて、構造を構築しているものと考えられる。また、このアルミノケイ酸塩またはシリカーAPにCu, Zn, Feの塩化物溶液処理を施すことにより、それぞれの結晶構造中に各金属イオン(またはクラスタ)を導入することができた。これらの試料について、熱分析による熱的性質や、拡散反射法によるUV-VIS吸収特性などの結晶化学的諸性質と、固体酸としての評価および各種触媒反応活性について検討を行なった。