表題番号:1996A-126 日付:2002/02/25
研究課題マクロ系及びメソスコピック系の量子論
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 中里 弘道
研究成果概要
 本研究ではマクロ系やメソスコピック系に対する量子論的理解をその最終目的とし、micro-macro transition の実現とその物理的、数学的基礎付けを念頭に、量子力学的観測問題及び関連する諸問題に焦点を当てて取り組んできた。具体的な成果としては、
 1. Nakazato-Pascazio によって提案された可解な力学的模型の、弱結合・マクロ極限における詳細な分析を進めることによって、この量子系に指数関数型の振る舞いをもたらすような確率過程( Wiener 過程)が存在すること、またその際 Wiener 過程をもたらす演算子が測定器系の自由 Hamiltonian (Heisenberg 演算子) で与えられることを明らかにした。
 2. 量子系の時間発展に関して改めて整理し直し、その振る舞い(時間スケールの短い方から順に、ガウス型、指数関数型、べき関数型)と複素エネルギー平面での解析性について一般的な関係を導出した。
 3. 量子ゼノン効果の検証実験として中性子スピンを利用する実験を提案し、その実現に向けての実験的・理論的検討を行った。
 4. デルタ関数型ポテンシャルよる波束の散乱を忠実に追跡し、その時間発展の様子を詳細に調べた。この場合の相互作用は到達距離 0 の短距離力であるにも拘らず、散乱後の波束は力が斥力であるか引力であるかによって時間のずれ(time delay or advance)を生ずることが分かった。しかしこの一方で、スピンのような内部自由度をもつ波束のスピン反転ポテンシャルによる散乱の場合には、時間のずれは消滅してしまうことも明らかになった。