表題番号:1996A-124 日付:2002/02/25
研究課題ルソーの「用語辞典」の作成-テキストのデータベース化-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 但田 栄
研究成果概要
 筆者は、かねてより、J.-J.ルソーの教育論『エミール』を中心に、Ame「心」という一語の用法を網羅的に調べ、その多義的な意味内容を明らかにしようとしてきた(ルソーにおける「心」の概念の研究)。その間、痛感したことは、ルソーの思想を解明するうえで鍵となる語が、最終的に、その全著作内でどのような使われ方をしているのか、それぞれの用例を瞬時に参照することができればとの思いであった。ルソーの「用語索引集」はすでに何冊も刊行されてはいるが、ある用語ごとに、その前後のコンテキストまでも含めて整理したものは、まだどこにも存在しない。そこで、そのような「辞典」を作成するためのコーパスとして、まずルソーの主要な作品を全文ディジタルデータベース化した(「プレイヤッド版」ルソー全集、全5巻)。この段階だけでも、ルソーの全テキストを横断する検索・編集がかなり可能となった(ただし、このデータベースは、著作権や版元の出版権の問題もあり、あくまでも学術的な研究、個人的な利用の範囲に限られる)。
  もとより、このデータベース化は、ひとつの手段にすぎない。筆者にとっての最大の関心は、ルソーの全作品を貫く宗教・道徳思想を一貫したシステムとして解明することにある。今後、パソコンを用い、これらのデータをもとに、Ame「心」、Conscience「良心」、Raison「理性」などのキー・ワードの意味を、それぞれの作品のコンテクストにおいて確定し、その変遷を跡づけ、最終的には、ルソーの「用語辞典」としてまとめたい。そこでは、ルソーの全著作にわたる、語彙と語彙が織りなす意味の網目の分析、すなわち、意味論的な研究が行われるであろう。その成果、少なくとも、その経過については、理工学部の紀要に報告する予定。