表題番号:1996A-123 日付:2002/02/25
研究課題建築構造物の減衰機構の策定に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 曽田 五月也
研究成果概要
 建築物の対震安全性を向上させるために特別な制振装置(ダンパー)を設置して建築物の減衰性能を高める事を有効と考えるが、設置するダンパーの必要性能を決定するには、建築物自体が保有する減衰特性の量的な評価のみならずメカニズムの特定もする必要がある。従来より、建築物の減衰特性に関してはその定量化のみが中心に扱われ、その発生機構の特定に関する研究はほとんど実施されていないので、本課題では先ず、小型の鋼製フレームを用いて振動実験によりその減衰機構を特定することに関する基本的な検討を行った。剛とみなされる梁(床)に4本の柱をボルト接合した1層モデルにより、柱材の有する内部減衰と接合部の有する減衰性能を量的に比較した。減衰特性の違いに及ぼす要因として、柱の材質(鋼、銅)、固有周期、振幅、経験塑性変形の大小などを考慮し、下記の3点を明らかにした。
 1)実験に使用した鋼構造フレームの減衰性能には粘性減衰として評価できる成分はほとんど存在せず、摩擦による減衰が大半を占める。全摩擦減衰に対する柱の内部摩擦の割合は小さく、大半を接合部における摩擦減衰が占める。
 2)鋼(強磁性体)の柱材は銅(非磁性体)の柱材に比べて高い内部粘性減衰性を有するものであるが、フレームとしての減衰性能では両者の違いはほとんど認められない。この事からもモデルの減衰性能の大半が接合部の摩擦機構によるものであると考える事が出来る。
 3)柱が塑性変形した後に構造の減衰性能は上昇するが、時間の経過とともに減少し、十分な時間の経過後には塑性変形を経験する前の性能とほぼ同じに復する。
 今年度の研究では、接合部を溶接とする場合の検討と、多層フレームの高次モードに対応する減衰定数の検討が行われておらず、今後の課題として残った。