表題番号:1996A-122 日付:2002/02/25
研究課題扇状地の形成過程に関する土砂水理学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 関根 正人
研究成果概要
 本研究は、河川により運ばれた土砂が扇状地を形成する過程を土砂水理学的に理解することを目的として行われたものである。一般に扇状地は透水性の高い砂礫により構成されており、そこを流れる河川水の多くが浸透し、伏流水となるため、扇央部では水無し川になることさえある。そこで、このような扇状地の形成過程を理解する上で、表面流と浸透流との相互作用と、表面流の浸透に伴う輸送土砂の堆積過程についての知見を得ることは重要な意味をもつ。さらに、その土砂の堆積によって扇状の地形が形成される過程において、流路はひとつところに留るわけではなく、「首振り」と呼ばれる流路のシフトが頻繁に生じることになるが、その素過程については未だ十分な力学的な理解が得られているわけではない。本研究では、こうした点に注目し、河川地形の形成機構に関わる基礎的な実験を行った。ここでは、土砂の輸送形式として掃流砂のみによるものを対象とし、他の研究者らにより進められている土石流の堆積に伴う地形の形成については検討の範囲外としている。
 本研究における実験では、堆積地形が形成される平地の地表面下に広がる透水層の透水性を変化させるほか、透水層内の水位を制御し、表面流から浸透流への遷移状況を変化させるなどして、土砂の堆積過程に生じる変化を系統的に調べた。その結果、(1) 透水性が高いほど土砂の堆積が促進され、堆積厚が大きく面積の小さな地形となることや、(2)透水性が低いほど円弧状のデルタの形成の際に見られるプロセスと類似のものとなること、さらには、(3) 扇状の堆積となるためには、流路の首振り・分岐が不可欠であり、これは砂面上の力学的不安定が原因となっていること、などの結論が得られた。さらに、扇状地が幅広い粒度分布をもった砂礫により構成されていることに着目し、堆積地形の地表面下に生じる「土砂の分級」についても詳細な解析を行い、興味深い成果を得ている。