表題番号:1996A-121 日付:2003/05/09
研究課題プレセラミックポリマーの熱分解による(Ti,Al)Nセラミックスの合成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 菅原 義之
研究成果概要
 金属-窒素結合を持つ無機高分子(前駆体)を熱分解する事で窒化物セラミックスを合成する方法は、液相において前駆体を分子レベルで分散させることが可能であり、固溶体合成において理想的な手法と考える。しかしながら、これまでこうした観点からの研究はほとんど行われていないのが現状である。
 本研究では2種のセラミックスの前駆体を用い、窒化物セラミックス固溶体を得る手法を提案するため、高強度、高耐食性を示し、拡散障壁セラミックス等への応用が期待されている(Ti,Al)Nセラミックスの合成を試みた。TiN前駆体にはTi(NMe2)4とMeHNCH2CH2NHMeの反応により得られた有機溶媒に可溶なオリゴマーを、AlN前駆体には有機溶媒に可溶なカゴ型6量体(HAlNiPr)6を用いた。(Ti,Al)N前駆体はTiとAlのモル比が5:1となるようにTiN前駆体及びAlN前駆体を仕込み、2種の前駆体が均一に分散するようにC6H6溶媒中、室温で6時間撹拌する事により調製した。(Ti,Al)N前駆体の熱分解はNH3雰囲気下600℃、2hと続くN2雰囲気下1350℃、8hで行った。得られた焼成物の粉末XRD回折分析パターンでは、岩塩型化合物(TiNは岩塩型化合物)による回折パターンが観測され、格子定数を算出したところ報告されているTiNの格子定数よりも小さな値を示した。また窒化アルミニウムによる回折線が観測されなかったことから、アモルファスなAlNの生成も考えられたが、(HAlNiPr)6を単独で同条件下で熱処理したときには結晶性のAlNが生成しており、その可能性は低いと考えられた。以上の結果から岩塩型化合物は(Ti,Al)N固溶体であると考えられ、2種の前駆体を熱分解する手法がセラミックス固溶体の合成方法として有効であることが示唆された。