表題番号:1996A-119 日付:2003/03/17
研究課題遠心ファンの高次翼通過周波数騒音の特性とモデル化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 太田 有
研究成果概要
 遠心ファンの発生騒音は、羽根車吐出流が舌部と干渉することで発生する翼通過周波数成分と、流れの中の渦などの非定常因子によって誘起される乱流広帯域成分とに大別される。翼通過周波数成分の発生および伝播機構については、従来からの研究により影響を与える物理パラメータが提示され、低減化の提案も行われている。しかし、その高次成分については、発生機構が極めて非線型性に富んでいるなどの理由により、実験的および理論的解析もほとんど行われた例がない。
 本研究では、実機遠心ファンを用いた詳細な計測実験により、この高次成分の発生・伝播機構に与えるパラメータの選定を指向し、合わせて乱流広帯域成分についてもその特性を考慮した評価法を提案することを目的とした。熱線流速計による羽根車吐出流の二次元計測結果より、高次(特に2次)成分の発生には、翼表面から周期的に放出される渦が影響していることが明らかとなった。この放出渦が拡散・減衰する過程の調査、および舌部表面上で圧力変動を誘起する過程の調査は、今後の研究課題であり、数値解析を併用した新たな研究展開を計画中である。また、単独翼の場合に、風洞設備を利用した放出渦と騒音の関係を調査する基礎実験も合わせて行っていく。一方、乱流広帯域成分については、伝播系と音源の特性を分離して考える騒音相似則を適用し、比較的高精度で騒音レベルを予測できることを示した。翼通過周波数成分の影響を除去するために、狭帯域バンドパスフィルタを用いた信号処理により、広帯域成分本来の音源特性を正確に把握することが可能となった。また、口金隙間や吸込管路長さなど、伝播経路の違いによる特性の変化も詳細に把握することができた。これらの幾何形状パラメータの影響を考慮した音源特性、伝播特性の物理モデルを構築することが、今後の研究課題と考えている。このためにも、先に述べた風洞実験を実施し、基礎資料の収集・整理を行う。